2022年3月10日木曜日

水中を360度見られるカメラを作る③


新生EYE-BALL。と言っても、もはやオリジナルの部品はドームと衝突防止ガードの2点のみになってしまったが、360度のカメラを搭載して蘇ることができた。
このカメラは、ドーム内が空洞なので浮力が大きい。内部のカメラを重厚でサーボに囲まれていた旧式から、スマートで軽量な360度カメラに変えてしまったし、新規部品が金属から樹脂に変わったこともあって、浮力は増えている。そのままだと浮いてしまうので、ガードの下にウエイトを繋げて水中に沈めることになる。ま、ウエイトを装着して沈めるのはオリジナルも同じで、専用のウエイトが用意されているのだけど、足りるのかな??。
どれくらいのウエイトを付ければ沈むのか、ということで、ウエイトの適正を水槽でテストする際に水密のチェックを行った。ダイブウェイズ社で製作した新しいパーツは見事に問題なく水密を一発クリアした。本来であれば圧力をかけた状態の耐圧検査をするところだが、そんな機材はあるはずもなく、目の前に膨大な圧力のある「海」があるので最終テストは海で行う。最悪水が漏れても、溜まっていく様子がカメラで見えるだろうから漏れてきたら上げればいいか、的な・・・


映像は第1回目ではないが、沼津の淡島にてのテストの様子。もちろん水漏れは一切ない。
ROV(水中ドローン)と違い、全方向が写っているので「何かを見る」という感じがしない。ある方向を向いたカメラの場合は、方向を変えたり進んでみたりと、いろいろと操作するものだが、全方向の場合は、その場で留まってじっくりと見回す感じだ。
ただ、実際に潜航させているときは移動の欲求がモリモリと出てくる。もちょっと上げて、とか下げて、とか。その割に後から映像を見る段階になると、もっと留まって欲しいという欲求が出てくる。映像を見直すうちに「あれ?これはなんだろう」というような状況になり「あー移動してしまった」となることが多々あるのだ。
普通のカメラとは全く別物として扱わないと効果の出ないのが360度カメラのようで、要研究ですな。

2022年3月6日日曜日

水中を360度見られるカメラを作る②

当時RICOHからRという業者向けの360度カメラが発売するところだった。360度カメラとして一般あ販売していたシータのシリーズで、Rは「ライブ配信に特化している」というのが売りだった。外部からの電源入力、HDMI出力があるのでRで検討することにした。
水中では電波は通じないのでwi-fiでの出力なんてなんの意味もない。火星に着陸した探査機の映像をライブで見る様な時代に、水中は相変わらずケーブル引き回しの刑なのであある。ので、有線出力がないと100%NG。かと言ってHDMIから出た信号はほんの数メートルしか伸ばせないので、SDIなどの信号に変換して同軸ケーブルで100mほどとなるようしないといけない。水深100mへの到達には、潮の流れで垂直では下ろせないことがほとんどであるし、船の上でも数mの余裕を考えないといけないので、せめて150mは欲しいところだが、まずは100mで実行する。

オリジナルのEYE-BALL上部

ドームハウジング内部でカメラから出た信号をSDIに変換し、外部に出さないといけないが、照明やサーボの動作を含めた複合ケーブルを使っていたオリジナルとはケーブルの径がかなり違うので使えそうもない。
なので、上部の蓋部分はオリジナルで製作することにする。お世話になっている株式会社ダイブウェイズにコンセプトとアイデアの絵を説明して設計してもらい、材料を選択してもらい、加工してもらう。ダイブウェイズ社は葛飾区東立石の町工場が溢れる場所にある、まさに下町ロケットの世界。潜水用のレギュレターや水中機器のハウジングで有名だが、長年お世話になってもいたので完成品への不安は一切ない。依頼した時点で、すでに完成した様な気になる。


ドーム上部の白い部分が新しいパーツ

製作にはそれなりの期間がかかったけど、当たり前だが設計図通りに品物は仕上がって来た。
新しいパーツに、今まで使ってきた、これまたダイブウェイズ社製の水密コネクターを取り付け、水中コネクターも取り付け、カメラと変換器を取り付け、映像と電源ケーブルを繋げる。
そうなる様に設計してあるので、パーツ完成後の作業は早い。
さて、スイッチオン。

内部の360度カメラ



映るね。映ります。
RICOH Rの良い点は外部からの電源オンでカメラに触ることなく起動するところ。カメラがドームハウジングの中に入ったままでオンオフできるというのは水中機器には絶対条件に近い。これが、電源ボタンを押さないといけないとなると、何かのトラブルで水中で電源が切れた場合、一回陸上に上げてから電源を入れ直し、ハウジングを開けてスイッチオン・・・などと、劇的に面倒になる。このRの場合はもはや入れっぱなし。整備以外で開けて出すことはないということになる。(他のがどうかは知らないけど)

さて、錆びた水が溜まっていたEYE-BALLは360度カメラとして復活に成功。とは言うものの、オリジナルの部品はドームと衝突防止のガードしかない…

さて、これで水中でのテストになります。