2021年6月12日土曜日

水中を360度見られるカメラを作る①

就職したのは1990年だか91年だかの20歳の時だった。縁あって水中環境調査とか水中映像撮影とか機器の販売の会社に就職した。今思えば笑えるくらいのアナログの機材に囲まれていたと思うのだけど、当時は最新鋭であり、笑えない値段の機材ばかりだった。カメラとレンズで1000万、防水ケースで1000万、重量50キロの大砲のようなカメラを普通に扱う仕事だったけど、今の時代に同じスペックのカメラを買おうとすれば5000円程度。さすがにギャップが激しすぎて恐ろしい。そんな時代から少々進んだ2016年に出会いがあった。

勤めていたを辞めて独立し、しばらくたった2016年「調査の会社の倉庫を整理するから色々引き取れ」と連絡があって向かう。訳あって社員のいなくなった倉庫は寂しく見えた。膨大にある様々な水中道具を使うものと使わないものに仕分けしていると、奥の方から、まるで捨てられたようなEYE-BALLがあるのを見た。箱から出してみると、水没して入った海水をそのままにしていたのだろう、錆びて茶色く濁った水が入った状態のまま放置してある。
EYE-BALLは日立造船が作った水中観測用のカメラで、アクリルドームの中でカメラヘッドがサーボで動く台に装着され、海上でジョイスティックを操作すると見たい方向が見られるというカメラだ。2021年の今では街角の防犯カメラでさえ普通のことだが、当時は海中で行えることが最新鋭だった。そんな機材も20年以上経つと、こうもなるのかという悲惨な状態だった。

【日造テックのHP】

中に錆びた水が溜まっているのだから、水中カメラとしては瀕死でもなく、脳死でもなく、完全に死亡している状態だったのだけど、最新だと思って扱っていた機材のなれの果てを見ると処分を認める訳にはいかず、そのまま引き取った。外側のドームは激しい環境で傷だらけではあるものの亀裂は入っていなかった、内部のカメラ機材は使わないとしても何かに使えるのではないかと、なんとなく思っていたようで、あてなく引き取る。
ちょうどその頃「360度カメラ」というワードが出てきて「?」と思う。「え?全部映るの?ならさ、このEYE-BALLに360度カメラを入れたら海の中が全て映るんじゃん?」
しかも
「VRで見たら自分がドームの中に入って潜ってる感じになるってこと?」と思い、擬似的にアクリルドームの中に入って潜る世界を想像して色々と考え始めることになるが、アナログ人間には結構な険しい道のりだったりする・・・