2011年5月14日土曜日

【5/12:雲見】 タイムマシーンは雲見式







2011年の台風トップバッターが、見事に日本列島コースに向かっている。




途中で熱帯低気圧に変わって勢力が落ちるとはいえ、第1号からこんなコースをたどる事があるのだろうかという見事なコース取りだ。



しとしとと雨が降る中、今日は伊豆半島の反対側、西伊豆の雲見へ。

西伊豆の雲見と言えば、牛着岩の“穴”。


水中にいくつもの穴があって、くぐり抜けて楽しめる冒険感のあるポイント。ウミウシの種類も多いので、最近ではウミウシ好きのダイバーにも人気だ。

が、僕は潜った事がなかった。

ダイバー始めて20年超え、それも今では伊豆でプロのガイドをしているというのに、雲見に潜った事がないというのではいかんだろう。と思いつつ、なんとなくそのままにしてあった。

最近始めたフェイスブックで雲見でガイドをしている友人と会話したことがきっかけで、「これは機会だろう!」ということで行ってみた。










5月13日
雲見

気温14.7度
東の風6m
水温16度
透視度5m前後


港のすぐ近くのある牛着岩。「うしつき」とも「ぎゅうちゃく」とも言うらしい。その昔、洪水の時に牛がこの岩に流れ着いて難を逃れた。という、とても名前の由来がストレートな岩である。

「さてさて、雲見はどんな海かなぁ」と興味深々で潜って行く。

まず第一印象は「うむ、海藻が少ないな」、だ。いや、少ないと言うよりないに近い。潜降した港側には大型海藻のアントクメが密集して生えていたのだけど、牛着岩の周辺になるとぱったりと途切れ、いわゆるテングサなどの背の低い海藻さえも見当たらない。






岩の表面は小さなフジツボが目立っている。海藻らしい海藻がないのはどうしてなんだろう?






いったいどいいう岩肌なんだろう?と思ってマジマジと見つめると、ボコボコと穴がたくさん開いているのに気付いた。
ちょっとつついてみたら穴の奥に動きがある。これは穿孔貝だ。

回りと同じ様に海綿に包まれてしまっているので分かりにくいのだけど、どうもカモメガイらしい穿孔貝が棲んでいるみたいだ。



穿孔貝は自分で岩に穴を掘って棲む2枚貝で、成長して大きくなると共に穴も大きく、深くしてゆく。岩の外に出る事は一生無い。




(断面想像図)



岩に穴を開ける為に、自らの体から化学物質を出して溶かしてゆく種類もあるのだけど、ニオガイやカモメガイは貝の表面がやすり状になっていて体を動かす事によって岩を削ってゆく。

流木をに穴をあけて生活する同じ仲間のフナクイムシは、トンネル工事のシールド工法のヒントになったと言うのだから、太古の昔から人間よりも最先端だったのだ。

この穿孔貝がたくさん棲んでいると言うことは、それほど硬い岩ではないようだ。

伊豆高原周辺の海ではこれほどたくさんの穿孔貝を見ないのは岩質が違うのだろう、海藻の植生の違いもその辺にあるのかもしれない。もっと基盤から見ていないといけないなぁ、と反省する。






さぁいよいよ穴に入ってゆく。


その時、大変な事が起こった。














不覚にも横穴への水流に巻き込まれてしまった。
前のブログで、「海底の穴に吸い込まれて、数億年前の海にタイムスリップするかもしれない」なんて書いたけど、ひょっとすると現実になってしまったかもしれない。












数億年前の海など見た事がないので判断はできないが、これは綺麗な白いウミウシだ。




タイムスリップによる磁場の変化があったのだろうか?どうもピントが合わない。
















これは、オセロウミウシと呼ばれている軟体動物ではないだろうか?



やはり磁場の影響なのか、ピントが合わない。





暗闇の奥にはテンジクダイ科の魚だ。

内臓以外は全てスケルトンになっている。テンジクダイ科の魚だから、雄が口の中で卵を守る「口内保育」をするのだろうが、このスケルトンでは卵が丸見えだろう。




やはり時空がずれているのだろう、後ろのウニにピントが行ってしまう…









穴の中は外よりも穏やかなのだろう、オオナガレカンザシが見事な棲管で岩肌に取り付いている。
「オオナガレカンザシ」と洒落た名前だが、様はミミズのようなもんだ。長い体の彼らは、自らの体から石灰質を分泌して管を作り、棲みかにする。

繊細で薄い筒状の家は、長い物では30センチを超える長さだ。大きく荒れれば壊れてしまうのだろうし、海藻が多ければよく見えないのが普通だけど、ここのオオナガレカンザシは見事だ。
岩肌にうねる細い管は彼らの生き様であり、感動さえ覚える。







これはウミシダ。「海のシダ」とは言うものの、植物ではなく動物だ。

このウミシダは植物で言う枝の部分にあたる“腕”の色が妙に青い。伊豆高原周辺の海ではこんなに腕の青いウミシダがいただろうか、僕の観察が足りないのか、それとも西伊豆に多い種類なのだろうか。






裏を見てみると、巻枝と言う岩にくっ付く足の部分が短くて細い、やっぱりあまり見ないウミシダなんではないかなと思う。
そして大きなエビが棲んでいた。
まるでモビルアーマーのようなこいつはテッポウエビの仲間のコマチテッポウエビっぽい。





そういえば写真のピントが合ってきた。
もしかしたら現代に戻って来たんではないかと思って浮上してみると、船が待っていた。ちゃんと現在に戻ってたんだ。




雲見のダイビングボートはすばらしい。
船尾には昇降式のリフトがあって、フィンを脱いで梯子なんて上がらなくてもいいんだ。ただ立っているだけで船の上。






いや待て、もしかしたら未来に来てしまったのかもしれない。





穴の中と外という静と動、光と闇。岩質や水深による生物の違いを楽しめる上に、穴くぐりでワイルド感を味わえると言う雲見の牛着岩は、なかなか面白い海だな。



ほんの少し移動しただけだけど、似たような海ではなかった。





穴の数は多すぎてよくわからなかったけどね
ポイントリクエストはバシバシ受け付ける事にします。共に冒険しましょう(笑)



金子さんありがとーっ!!

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