2026年4月12日日曜日

『幸運の電気ショック・シビレエイ|水中映像(伊豆)』

シビレエイ

【シビレエイの解説・サンプルムービーのページはこちら】

 https://www.azarasi.jp/details/sibireei.html


随分前に、奥さんと一緒に潜っていた時に、このエイに出会った。
特に目立つものの無い砂の斜面で、ふと横にいる奥さんを見た時、ものすごい勢いで手を引っ込めた。
「うわっ!」という声が聞こえそうなくらいのアクションで、目は驚きで見開いている。

砂に手を突っ込んで、ブンブクの鋭い棘にでも刺さったのかと思ったが、砂の中からシビレエイが出てきたので納得だった。
シビレエイは電気を発電して、砂の中の動物にショックを与えて捕食したり、外敵から逃げる際の攻撃として使うからだ。

とは言うものの、自分で電気ショックを受けたことは無かったし、誰かの感想を聞いたことも無かったので、シビレエイが砂の中からムクムクと出てきたときは、「あー、なるほどね」と、とても納得だった。
後から聞くと、「バンッ!」とか「ビシッ!」というような、エレベーターのボタンに触れる時の静電気のような指先の感触だったらしい。

シビレエイの電力は、電池のように貯めたものを使うのではなく、発電細胞から一発でドンっと発電するらしい。
生まれたての小さなシビレエイにも発電能力はあるらしいが、発電細胞が少ないため弱く、成長と共に強くなるという。
そう考えると、凄く大きなシビレエイは、かなりのショックなのかもしれない。

注意しようにも、砂に隠れたシビレエイは、よほど慣れていないと見つからない。
それほど沢山いる生物でもないし、危険な外敵だと思わなければ、電気ショックの引き金は引かないので、見つけたシビレエイをつついたとしても、必ずビシッと来るとは限らないのだ。
偶然でバシッときたら、もはや幸運だと思うべきだろう。

砂の中に棲む生物が好きなので、自分では、海底の砂を常にホジホジしている方だと思う。
通算数千ホジホジにはなるはずだが、夫に幸運はまだ訪れていない。

2026年4月1日水曜日

『面倒な魚・メアジ|水中映像(伊豆)』



メアジ
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 秋の気配がまだ漂わない、猛暑の9月。
知り合いのダイビングガイドから「堤防の先の方へ行くと群れが凄いよ」と教えてもらった。

いそいそと堤防沿いを泳いでいくと、先端に近づくにつれて魚影が濃くなっていく。
カマスの大群はまったりと徘徊するように浮遊し、ハタンポは消波ブロックにまとわりつく影のように群れている。

なんだこれ、凄いな――。
そう思いながら遠くに目をやると、銀色の群れが物凄い勢いで泳いでいる。
カンパチやカツオ的な大型魚に追われているようだ。

と思った次の瞬間、銀の大群がこちらへ向かってきて、自分たちの周りをすり抜けていった。
まるで機関銃で総攻撃されたかのような、突き刺さりそうな速度だった。

アジであることは間違いなさそうだが、あまりの速さに魚体の細部は見えない。
マアジなのか?でも、目の前にはゆったりと泳ぐマアジがおり、同じ魚とは思えない。
もしかしてメアジ?クロアジタイプのマアジってやつかな?などと思いつつも、あんなスピードの魚をビデオに収めるのは無理だなと諦めていた。

それにしても群れが凄いので、その後何度か通ってみると、少しだけ動きが緩む場面に出会った。
録画ボタンを押し、画面越しに追うものの――どうにも撮りづらい。

群れごとターンを頻繁に繰り返し、動きに合わせて追っているつもりでも、思った方向とは違う方へ流れていく。
「あー!めんどくさいな、こいつ」
思わず水中で文句を言う。

後で再生してみると、やはりメアジのようだ。
といっても、手に取って見ているわけではないので、真横を向いたシーンでコマ送り、コマ送り……。
メアジとマアジはよく似ている。
マルアジもよく似ている。
画面に物差しを当てて、頭の大きさなどを確かめてみたり。

めんどくさいな、メアジ!

もう、撮るのも見るのも面倒なのが「メアジ」となった。
メアジのメは、面倒のメだ!。

2026年3月24日火曜日

『夜中の軍隊は海へ行く・ヤリイカ|水中映像(伊豆)』



ヤリイカ
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夜中に「ザッ、ザッ、ザッ」と、家の前を軍隊が通るような音がする。

知らない人が聞いたら「えっ、何?」と驚きそうだが、本当に軍隊が通るはずもない。
正体は、釣り人が履くスパイク付き長靴の音だ。

 

すぐそばは岩の海岸――というより、ほとんど崖なのだが、釣り人には有名な場所らしい。

本格的な冬を迎える頃になると、夜の海は、まるで蛍が舞うように美しくなる。
電気で光る“浮き”が水面で揺れ、ピューッと跳ね上がったかと思うと、ビューンと沖へ走る。

どうやら、ヤリイカ釣りらしい。

 

ダイバーにとって、ヤリイカはなかなか出会えない生き物だ。

ふだんは水深100mほどの深場に生息し、産卵のために岸へ寄るのは真冬の夜だという。
これでは、まず出会わない。

その昔、先輩たちから、産卵に来るヤリイカを撮影するため、真冬の海でひたすら待ち続けたという話を何度も聞かされた。


真夜中の海中で待機し続け、トイレはもちろん我慢。

いざ「ヤリイカが来た!」となったときに限って、ライトを持った誰々がいなかった――そんな話もあった。

今のように快適に潜れる装備がなかった時代の、まさに気合と根性の世界である。
あまりに繰り返し聞かされるうちに、他の武勇伝と混ざり、いつしか自分の中では
「ヤリイカ=根性」になっていた。

 

ところが最近、定置網の中に潜れる機会を得て、思いがけず普通に出会うことができた。

初めて見る生きたヤリイカは、鮮魚店で見るよりも、ずっと“槍”らしい。
細く、鋭く、まさに名前のとおりの姿だ。

少し小ぶりで、ふっくらとした雌の個体を見るのも初めてだった。

 

前回は、生きたクロシビカマス(伊東でいうヤッパタ)の美しさに驚かされたし、さすが定置網、すばらしい。 

夜中のスパイクの音を聞いて、先輩たちの武勇伝を思い出していたけど、いともあっさり呪縛から解放されてしまった。
なんかちょっとズルをしているような気もするが――まあ、気にしないことにしよう。

2026年3月13日金曜日

『白くたなびく毒の糸・サムクラゲ|水中映像(伊豆)』



サムクラゲ
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▶ https://www.azarasi.jp/details/samukurage.html

青い海の中では白いものがとてもよく目立つ。
離れて見れば青っぽくはなるものの、周囲との明暗差があるので、「ん? なんだろう」と気づきやすい。
キヨヒメクラゲみたいに透明だと見えにくいけれど、白っぽいクラゲは意外と目立つ。

逆に赤は、海の中では黒ずんでしまう。
赤い縞々のアカクラゲは明るい場所で見れば一見派手だけれど、水中ではむしろ迷彩色だ。

このサムクラゲは、かなり白っぽい。
傘も触手も白っぽいが、中央のひらひらした部分、いわゆる口腕の部分が透明感のない白で、これがなかなか目立っていた。

最初に見たとき、このクラゲはダイビングエリアの境目を示す海底の浮きに、触手を引っ掛けた状態だった。
とにかく触手が長い。

自分のワゴン車より少し長いかと思ったので、5mほどだろうか。
もっとも、水中マスク越しに見ると物体は大きく見えるので、三割引きして4mほどといったところかもしれない。

タコ糸のように細い触手に毒の刺胞があり、獲物を麻痺させて絡めとる。
文章にすると、まるで他の惑星のモンスターだ。

触手は細いわりに意外と丈夫なようで、千切れる様子はない。
しかも「しばらくこのままでもいいか」という感じで、脱出しようという素振りもない。
なので、少しお手伝いすることにした。

少し刺激を与えれば触手は縮むはずなので、引っ掛かっている触手が縮めば外れるだろうと思い、浮きの付いたロープを軽く揺すってみる。
軽く、自分に触手が来ないように。
すると、予想通り触手は短くなりながら、するするとロープから外れていった。

解放されたサムクラゲは元気よく拍動し、どんどん水面へ上がっていく。
自分も浮上しながら、ときどき海底を見て、さっきの浮きを確認する。
クラゲは意外と速いので、夢中になって泳いでいるうちに、知らない場所へ流されてしまうこともあるからだ。
幸い、ほぼ真上に上がっていたようで、ダイビングエリアから外れてはいなかった。
もう水面。というところまで来たので、サムクラゲとは、ここでお別れにする。

文ではサムクラゲと書いているが、最初はユウレイクラゲかと思っていた。

図鑑を見てもイマイチ納得いないでいると、次のページにサムクラゲが載っていて納得の範囲に収まった。
ということでサムクラゲなのだけれど、実のとことは違いの説明が難しすぎてわからず、あまり自信はない。

ところで「サム」とは何だろう。
寒い海に棲むクラゲらしいので、「寒」なのかな。

2026年3月7日土曜日

『雨上がりの沼津で・キヨヒメクラゲ|水中映像(伊豆)』



キヨヒメクラゲ
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【キヨヒメクラゲの詳細情報・サンプル動画はこちら】

https://www.azarasi.jp/details/kiyohimekurage.html

 撮影したのは3月の沼津・大瀬崎。
春濁りもなく、海は透き通るように青かった。だからだろうか、次から次へと妙な生物が目に入ってきて、少々困るほどだった。

このとき、キヨヒメクラゲと、後からわかる物体には二度出会っている。
一度目はユウレイクラゲに出会っている最中で、背景には恐ろしく長い触手が映っている。

意外と早く流れていく中、「私と彼女とどっちを撮るの?!」みたいな状況になったが、即決でユウレイクラゲを選択した。

浮遊している生物は表層に多いようなので、海底の水深は深くなるものの、水深5mほどの層を探索する。
いろいろなサルパに出会い、1時間ほど経ったころ、もう帰ろうかなと思ったタイミングで二個体目に出会った。もちろん、そのときは最初の生物と同じ種類だとは思っていない。

綺麗な生物だったが、透明すぎてファインダーでは見えない。
とりあえずノーファインダーで撮っておいたものだ。

そういえばこのとき、長年使っていた水中ライトがひとつ水没した。
仕方なく照明は一灯だけになってしまったのだが、そういうときに限って、照明が必要な生き物がたくさん出てくる。

RCサクセションの歌が頭の中を駆け回りそうだけれど、この日は、明け方まで土砂降りで、そのあとの雨上がりだった。
驚くほど綺麗に富士山と南アルプスが見える、気持ちのいい一日だったので、ライトが水没したことも、あまり気にならなかった。

2026年2月28日土曜日

『ウミヘビも溺れて死ぬ・イイジマウミヘビ|水中映像(伊豆)』



イイジマウミヘビ
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【イイジマウミヘビの詳細情報・サンプル動画はこちら】

▶ https://www.azarasi.jp/details/iijimaumihebi.html

 

 ダイナンウミヘビやホタテウミヘビなど、「〇〇ウミヘビ」と名の付く魚類は意外と多い。
伊豆半島でダイバーに紹介すると、「えっ、ヘビなんですか?」となるが、「いいえ、名前にはウミヘビと付きますが、爬虫類のヘビではなく魚なんです」と返すのが定番のやり取りで、「あぁよかった、ヘビじゃないんだ」と安心されるパターンである。

ところが沖縄の場合は、マジでヘビだ。

20代の頃、水中撮影の仕事で沖縄に潜る機会が多くあり、縞模様のウミヘビにはよく出会った。
ヘビは嫌いではないので捕まえたこともある。可愛らしい顔を眺めて手を離すと、水面に向かって勢いよく泳ぎ出すので、「そうか、息を吸わないと溺れちゃうんだな」
なんて思いながら見上げていたものだ。

随分あとになって、本物のウミヘビはコブラ科のヘビだと知り驚いた。あのコブラである。
しかもエラブウミヘビは、ハブの何十倍もの強い毒を持つという。
「口が小さいからさ、咬まれないよ」なんて教えられて安心していたけど、いやぁ、知らないというのは恐ろしい。
*実際のところ、咬まれる事例は雷に直撃するよりも少ないらしい。

さらに最近になって、マジなウミヘビにも種類があり、エラブウミヘビ以外の仲間もいると知った。
それまで私は、ウミヘビは全部イラブーで、泡盛の瓶の中でぐるぐる巻いているあれだと思っていたので、結構な衝撃だった。

では映像のウミヘビはどうなのかと思って見直してみると、どうやらハブの何十倍というエラブウミヘビではないようだった。
縞模様は似ているが、境目がギザギザしていて、模様が食い違っている部分があるし、顔にも白い縞がある。
エラブウミヘビはというと、なんというか、いかにも毒がありそうな感じの縞模様だ。

結局のところ「イイジマウミヘビ」という、やはり本物のヘビの仲間だった。

イイジマウミヘビはエラブウミヘビとは属が違い、陸に上がることがないという。
ウミヘビが上陸して卵を産むと知ったのは、猛毒だと知った時と種類があると知った時の中間くらいの頃で、これも衝撃だったのだが、今度はそれを覆された形だ。

完全に海での生活に適応できたのは、卵ではなく仔ヘビを産む胎生になったからだそうだ。
しかも魚の卵しか食べないため、牙や毒腺は小さく退化し、ほぼ無毒になっているという。
だからなのか、イイジマウミヘビは泡盛の中でぐるぐる巻かれることはないらしい。

いろんな種類がいて、いろんな生態があるとは、エラブウミヘビ以外の「本物のウミヘビ」の皆さんには大変失礼であったと反省している。

今度沖縄で潜る機会があったら、ちゃんと観察することにしようと思う。
もちろん、もう捕まえることはしない。

2026年2月21日土曜日

『つぶらな瞳のアバサー・ネズミフグ|水中映像(伊豆)』

ネズミフグ水中映像
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【ネズミフグの詳細情報・サンプル映像はこちら】

https://www.azarasi.jp/details/nezumifugu.html


ネズミフグ。伊豆の東海岸で潜っていて、正直、よく出会う生物ではない。
ウッカリカサゴのように「出会っていたのにうっかり気づかなかった」というわけではないだろう。大きくて丸い瞳と、絵にかいたような口元は、
「ほぼゆるキャラ」としか言いようがない可愛らしさがあるので、まず他の魚とは間違えようがない。

こんな可愛らしい魚の標準和名が「ネズミ……」というのが気になって、なんでだろうと考えてみると、やはり、あの世界的に有名なネズミキャラクターのことが頭によぎる。
いったい、あのキャラクターは、いつ日本に来たのだろう?と調べると、日本初上陸は、1929年の「蒸気船ウィリー」という映画であり、ネズミフグという標準和名が文献に登場するのは、1930年以降。ということがわかった。

 
時代的に合ってるじゃないか!と調子に乗ると、さらに…
当時の「蒸気船ウィリー」は、子供向けのアニメーションではなく、映像と音声が同期した、画期的な最新映像作品であったため、映画を見るのは主に大人であったという。
しかも、当時の○ッキーは、現在のように清くなく、酒も飲みタバコも吸う「ヤンチャな若者」的であったそうだ。

「見たんだ、和名の命名者は、きっと映画を見たんだ 」
もはや自分の中では再現ドラマが出来上がる。 

しかしながら、「ネズミ」という動物への印象も今と昔では違っているというのもある、今のように、不衛生な迷惑な動物という扱いではなかったようだ。

七福神の一人、大黒様の使いであるネズミは、五穀豊穣や金運上昇をもたらす動物であり、子孫繁栄の象徴、神の恩人であるなど、嫌われる要素は一つもない。
「ネズミフグにネズミと付くのは、可哀そうだ」という感覚自体が、すでに現代風であって間違いに元なのではある。

まぁ、結局のところ、ネズミフグの由来はわからないのだけど、命名者は「蒸気船ウィリー」を見て、「縁起と最新技術のコラボだし、ネズミフグにしよう!」とか思ったのではないかと思う。
誰だかはわからないけど……