2026年4月30日木曜日

『深海のオーパーツ・ネジレカラマツ|水中映像(伊豆)』



螺旋で水中の抵抗を分散するネジレカラマツ

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【ネジレカラマツ、ムチカラマツの詳細情報・サンプル動画はこちら】 

 
 ネジレカラマツは、なぜ螺旋をしているのか。
そう思って調べてみると、関連する研究論文はいくつか見つかる。

「螺旋構造が水流の抵抗を分散する」といった説明が多く、なるほど、とは思う。
けれど、激しい流れが螺旋に当たって、なぜそれで“分散される”のか。
どうにも腑に落ちない、どこかモヤモヤした感覚が残っていた。

そんなあるとき、ふと何年も前の記憶がよみがえった。
自宅前で電線工事が行われていたときのことだ。
高所作業車に乗った作業員が、電線にゆるい螺旋状のケーブルのようなものを取り付けていた。

あんまりにも緩いので不思議に思い、地上にいた監督らしき人に「あのネジネジは何すか?」と尋ねると、「あれを付けておくと、強風が吹いても切れにくくなるんですよ」と教えてくれた。

――ネジレカラマツの螺旋と、あの電線のネジネジ。
狙ってる効果、一緒じゃない??

そう思って調べてみると、一本の電線は、微風でも強風でも意外なほど振動しやすく、それが繰り返されることで、最終的には根元が疲労して断線してしまうのだという。

ダイビング中に長い棒を勢いよく振ると、「ブルブルブルッ」と震える。
あの現象と同じだ。

ところが、その1本の電線に沿わせて螺旋状の部材を取り付けると、風による振動が抑えられ、断線しにくくなるらしい。

この螺旋の効果は、およそ70年前にイギリスで考案された技術で、巨大な煙突が風で振動し、疲労がたまって折れてしまうという現象をを防ぐためのものだったという。

一方、ネジレカラマツの祖先は、3億年から数千万年前には現れていたとされるので、同じ原理だとすれば、ネジレカラマツの方がずいぶんと先取りしていたことになる。

あぁ、これでスッキリ
かと思いきや、海の中を見渡すと、“ムチ”カラマツは“まっすぐ”な一本の姿をしている。
しかも、むしろネジレカラマツより数が多い。

一本の形にも、それはそれで効率がある――と説明されるが、
正直なところ、まだ納得しきれていない。

激しい流れの中では、完全に横にしなることで力を逃がしているのだろうか。
そういえば、釣り竿は折れにくいな。

――まあ、そのうちまた、何かひらめくかもしれない。

2026年4月24日金曜日

『漬け置かれる生物たち・ウスバハギ若魚|水中映像(伊豆)』



ウスバハギ幼魚のベイツ型擬態
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【ソウシハギに化ける?ウスバハギの詳細情報・サンプル映像はこちら】
https://www.azarasi.jp/details/usubahagi-yg.html
 
 ウスバハギがソウシハギにベイツ型擬態しているんじゃないか?なんて、撮っているときはまったく思っていない。

晴れた日の水面スレスレで、明るすぎてファインダーもよく見えず、「あれ?どこいった??」というくらいなもので、模様の変化なんて気づくはずもなく、その日たくさんいたソウシハギの一部、という感じだった。

撮影した映像は、「撮れてたかな?」くらいだけチラ見して、日付ごとのフォルダに入れる。
しばらくすると、ちゃんと見て種類分けして、「仮倉庫」と呼んでいるフォルダに移動させる。

仮倉庫は、まだ整理されていない生物たちがウゴめいている場所で、
以前の映像と組み合わせたり、新しく編集されたりしたものだけが「分類リスト」に昇格して、ようやく整理された状態になる。

今回の若いウスバハギも、種類分けのときに「あぁなんか違うな」と感じて、「ウスバハギ?」とハテナ付きで仮倉庫送りしたものだった。

それを思い出したのは、ウスバハギ成魚のページを整理していたとき。
「あぁそういえば“ウスバハギ?”ってあったな」と見返してみると、あまりにも成魚と違う。

本当にウスバハギなのか?と疑いながら何度も見ているうちに――

「あれ、この模様、浮き出てるな」

となったやつだ。

仮倉庫にはかなりの数の生物が溜まっていて、もう何がいるのかよくわからないくらいだ。
ただ、どうも不思議なことに、撮ってすぐ調べるより、しばらく放置してから見直した方が、こういう違和感や発見には気づきやすい気がする。

そう、その方がいいんだ。
現状のペースが急に上がることなんてまずないし、だったらこのやり方にも意味があるんだ!と、そう思うことにする。

もしかして、これが沼というやつなのか……?

2026年4月17日金曜日

『未成年地元詐欺・マアジ|水中映像(伊豆)』

 

マアジ

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【マアジの詳細情報とサンプル映像のページはこちら】

 https://www.azarasi.jp/details/maaji.html


 マアジは、魚の定番だ。
鮮魚店の店先にはいつでも並び、海の中の絵を描けば、誰もが“マアジ的な魚の群れ”を思い浮かべるだろう。
しかし意外なことに、実際の海の中で出会う機会は、そう多くはない。

秋の気配すら感じられない、猛暑の9月。
堤防の先端でメアジの機関銃のような突進を浴びているとき、ふと視界の端に、消波ブロックの表面をゆったりと泳ぐマアジの群れがいた。

そのときは、猛スピードでトリッキーな動きをするのもマアジだと思っていたので、
居なくなってしまいそうな、動きの激しい方に優先順位がついて、穏やかに泳ぐマアジたちは、その後撮れるだろ的な「その次か、またその次」という扱いになった。

この“まったりした地元感”には、注意が必要だ。
「ずーっと、いつでも居ますよ」とでも言いたげな空気をまとったその姿は、いわば“地元詐欺”。
その油断を突かれて、“録画ボタンを押さない”という被害に、何度も遭いがちだ。

彼らは、決して“ずっと居る魚”ではない。

アジの干物、アジフライ、唐揚げ、塩焼き、刺身、なめろう、そしてサンガ焼き――。
あまりにも当たり前に食卓に並ぶその存在が彼らの手口である。
保冷技術と輸送網を発達させた人類も、ある意味共犯だ。

日本人に「当たり前」を刷り込むのは、縄文時代から周到に練られてきた壮大な計画らしいが、
マアジは1年でおよそ18センチ、2年で24センチ前後となって性成熟に達するとされているので、映像に映っている実行犯のマアジ達は、1歳未満の未成熟だ。
しかたがない、許してやる。

2026年4月12日日曜日

『幸運の電気ショック・シビレエイ|水中映像(伊豆)』

シビレエイ

【シビレエイの解説・サンプルムービーのページはこちら】

 https://www.azarasi.jp/details/sibireei.html


随分前に、奥さんと一緒に潜っていた時に、このエイに出会った。
特に目立つものの無い砂の斜面で、ふと横にいる奥さんを見た時、ものすごい勢いで手を引っ込めた。
「うわっ!」という声が聞こえそうなくらいのアクションで、目は驚きで見開いている。

砂に手を突っ込んで、ブンブクの鋭い棘にでも刺さったのかと思ったが、砂の中からシビレエイが出てきたので納得だった。
シビレエイは電気を発電して、砂の中の動物にショックを与えて捕食したり、外敵から逃げる際の攻撃として使うからだ。

とは言うものの、自分で電気ショックを受けたことは無かったし、誰かの感想を聞いたことも無かったので、シビレエイが砂の中からムクムクと出てきたときは、「あー、なるほどね」と、とても納得だった。
後から聞くと、「バンッ!」とか「ビシッ!」というような、エレベーターのボタンに触れる時の静電気のような指先の感触だったらしい。

シビレエイの電力は、電池のように貯めたものを使うのではなく、発電細胞から一発でドンっと発電するらしい。
生まれたての小さなシビレエイにも発電能力はあるらしいが、発電細胞が少ないため弱く、成長と共に強くなるという。
そう考えると、凄く大きなシビレエイは、かなりのショックなのかもしれない。

注意しようにも、砂に隠れたシビレエイは、よほど慣れていないと見つからない。
それほど沢山いる生物でもないし、危険な外敵だと思わなければ、電気ショックの引き金は引かないので、見つけたシビレエイをつついたとしても、必ずビシッと来るとは限らないのだ。
偶然でバシッときたら、もはや幸運だと思うべきだろう。

砂の中に棲む生物が好きなので、自分では、海底の砂を常にホジホジしている方だと思う。
通算数千ホジホジにはなるはずだが、夫に幸運はまだ訪れていない。

2026年4月1日水曜日

『面倒な魚・メアジ|水中映像(伊豆)』



メアジ
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【メアジの詳細情報・サンプル動画ページはこちら】
 
 秋の気配がまだ漂わない、猛暑の9月。
知り合いのダイビングガイドから「堤防の先の方へ行くと群れが凄いよ」と教えてもらった。

いそいそと堤防沿いを泳いでいくと、先端に近づくにつれて魚影が濃くなっていく。
カマスの大群はまったりと徘徊するように浮遊し、ハタンポは消波ブロックにまとわりつく影のように群れている。

なんだこれ、凄いな――。
そう思いながら遠くに目をやると、銀色の群れが物凄い勢いで泳いでいる。
カンパチやカツオ的な大型魚に追われているようだ。

と思った次の瞬間、銀の大群がこちらへ向かってきて、自分たちの周りをすり抜けていった。
まるで機関銃で総攻撃されたかのような、突き刺さりそうな速度だった。

アジであることは間違いなさそうだが、あまりの速さに魚体の細部は見えない。
マアジなのか?でも、目の前にはゆったりと泳ぐマアジがおり、同じ魚とは思えない。
もしかしてメアジ?クロアジタイプのマアジってやつかな?などと思いつつも、あんなスピードの魚をビデオに収めるのは無理だなと諦めていた。

それにしても群れが凄いので、その後何度か通ってみると、少しだけ動きが緩む場面に出会った。
録画ボタンを押し、画面越しに追うものの――どうにも撮りづらい。

群れごとターンを頻繁に繰り返し、動きに合わせて追っているつもりでも、思った方向とは違う方へ流れていく。
「あー!めんどくさいな、こいつ」
思わず水中で文句を言う。

後で再生してみると、やはりメアジのようだ。
といっても、手に取って見ているわけではないので、真横を向いたシーンでコマ送り、コマ送り……。
メアジとマアジはよく似ている。
マルアジもよく似ている。
画面に物差しを当てて、頭の大きさなどを確かめてみたり。

めんどくさいな、メアジ!

もう、撮るのも見るのも面倒なのが「メアジ」となった。
メアジのメは、面倒のメだ!。

2026年3月24日火曜日

『夜中の軍隊は海へ行く・ヤリイカ|水中映像(伊豆)』



ヤリイカ
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夜中に「ザッ、ザッ、ザッ」と、家の前を軍隊が通るような音がする。

知らない人が聞いたら「えっ、何?」と驚きそうだが、本当に軍隊が通るはずもない。
正体は、釣り人が履くスパイク付き長靴の音だ。

 

すぐそばは岩の海岸――というより、ほとんど崖なのだが、釣り人には有名な場所らしい。

本格的な冬を迎える頃になると、夜の海は、まるで蛍が舞うように美しくなる。
電気で光る“浮き”が水面で揺れ、ピューッと跳ね上がったかと思うと、ビューンと沖へ走る。

どうやら、ヤリイカ釣りらしい。

 

ダイバーにとって、ヤリイカはなかなか出会えない生き物だ。

ふだんは水深100mほどの深場に生息し、産卵のために岸へ寄るのは真冬の夜だという。
これでは、まず出会わない。

その昔、先輩たちから、産卵に来るヤリイカを撮影するため、真冬の海でひたすら待ち続けたという話を何度も聞かされた。


真夜中の海中で待機し続け、トイレはもちろん我慢。

いざ「ヤリイカが来た!」となったときに限って、ライトを持った誰々がいなかった――そんな話もあった。

今のように快適に潜れる装備がなかった時代の、まさに気合と根性の世界である。
あまりに繰り返し聞かされるうちに、他の武勇伝と混ざり、いつしか自分の中では
「ヤリイカ=根性」になっていた。

 

ところが最近、定置網の中に潜れる機会を得て、思いがけず普通に出会うことができた。

初めて見る生きたヤリイカは、鮮魚店で見るよりも、ずっと“槍”らしい。
細く、鋭く、まさに名前のとおりの姿だ。

少し小ぶりで、ふっくらとした雌の個体を見るのも初めてだった。

 

前回は、生きたクロシビカマス(伊東でいうヤッパタ)の美しさに驚かされたし、さすが定置網、すばらしい。 

夜中のスパイクの音を聞いて、先輩たちの武勇伝を思い出していたけど、いともあっさり呪縛から解放されてしまった。
なんかちょっとズルをしているような気もするが――まあ、気にしないことにしよう。

2026年3月13日金曜日

『白くたなびく毒の糸・サムクラゲ|水中映像(伊豆)』



サムクラゲ
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▶ https://www.azarasi.jp/details/samukurage.html

青い海の中では白いものがとてもよく目立つ。
離れて見れば青っぽくはなるものの、周囲との明暗差があるので、「ん? なんだろう」と気づきやすい。
キヨヒメクラゲみたいに透明だと見えにくいけれど、白っぽいクラゲは意外と目立つ。

逆に赤は、海の中では黒ずんでしまう。
赤い縞々のアカクラゲは明るい場所で見れば一見派手だけれど、水中ではむしろ迷彩色だ。

このサムクラゲは、かなり白っぽい。
傘も触手も白っぽいが、中央のひらひらした部分、いわゆる口腕の部分が透明感のない白で、これがなかなか目立っていた。

最初に見たとき、このクラゲはダイビングエリアの境目を示す海底の浮きに、触手を引っ掛けた状態だった。
とにかく触手が長い。

自分のワゴン車より少し長いかと思ったので、5mほどだろうか。
もっとも、水中マスク越しに見ると物体は大きく見えるので、三割引きして4mほどといったところかもしれない。

タコ糸のように細い触手に毒の刺胞があり、獲物を麻痺させて絡めとる。
文章にすると、まるで他の惑星のモンスターだ。

触手は細いわりに意外と丈夫なようで、千切れる様子はない。
しかも「しばらくこのままでもいいか」という感じで、脱出しようという素振りもない。
なので、少しお手伝いすることにした。

少し刺激を与えれば触手は縮むはずなので、引っ掛かっている触手が縮めば外れるだろうと思い、浮きの付いたロープを軽く揺すってみる。
軽く、自分に触手が来ないように。
すると、予想通り触手は短くなりながら、するするとロープから外れていった。

解放されたサムクラゲは元気よく拍動し、どんどん水面へ上がっていく。
自分も浮上しながら、ときどき海底を見て、さっきの浮きを確認する。
クラゲは意外と速いので、夢中になって泳いでいるうちに、知らない場所へ流されてしまうこともあるからだ。
幸い、ほぼ真上に上がっていたようで、ダイビングエリアから外れてはいなかった。
もう水面。というところまで来たので、サムクラゲとは、ここでお別れにする。

文ではサムクラゲと書いているが、最初はユウレイクラゲかと思っていた。

図鑑を見てもイマイチ納得いないでいると、次のページにサムクラゲが載っていて納得の範囲に収まった。
ということでサムクラゲなのだけれど、実のとことは違いの説明が難しすぎてわからず、あまり自信はない。

ところで「サム」とは何だろう。
寒い海に棲むクラゲらしいので、「寒」なのかな。