2026年3月24日火曜日

『夜中の軍隊は海へ行く・ヤリイカ|水中映像(伊豆)』



ヤリイカ
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夜中に「ザッ、ザッ、ザッ」と、家の前を軍隊が通るような音がする。

知らない人が聞いたら「えっ、何?」と驚きそうだが、本当に軍隊が通るはずもない。
正体は、釣り人が履くスパイク付き長靴の音だ。

 

すぐそばは岩の海岸――というより、ほとんど崖なのだが、釣り人には有名な場所らしい。

本格的な冬を迎える頃になると、夜の海は、まるで蛍が舞うように美しくなる。
電気で光る“浮き”が水面で揺れ、ピューッと跳ね上がったかと思うと、ビューンと沖へ走る。

どうやら、ヤリイカ釣りらしい。

 

ダイバーにとって、ヤリイカはなかなか出会えない生き物だ。

ふだんは水深100mほどの深場に生息し、産卵のために岸へ寄るのは真冬の夜だという。
これでは、まず出会わない。

その昔、先輩たちから、産卵に来るヤリイカを撮影するため、真冬の海でひたすら待ち続けたという話を何度も聞かされた。


真夜中の海中で待機し続け、トイレはもちろん我慢。

いざ「ヤリイカが来た!」となったときに限って、ライトを持った誰々がいなかった――そんな話もあった。

今のように快適に潜れる装備がなかった時代の、まさに気合と根性の世界である。
あまりに繰り返し聞かされるうちに、他の武勇伝と混ざり、いつしか自分の中では
「ヤリイカ=根性」になっていた。

 

ところが最近、定置網の中に潜れる機会を得て、思いがけず普通に出会うことができた。

初めて見る生きたヤリイカは、鮮魚店で見るよりも、ずっと“槍”らしい。
細く、鋭く、まさに名前のとおりの姿だ。

少し小ぶりで、ふっくらとした雌の個体を見るのも初めてだった。

 

前回は、生きたクロシビカマス(伊東でいうヤッパタ)の美しさに驚かされたし、さすが定置網、すばらしい。 

夜中のスパイクの音を聞いて、先輩たちの武勇伝を思い出していたけど、いともあっさり呪縛から解放されてしまった。
なんかちょっとズルをしているような気もするが――まあ、気にしないことにしよう。

2026年3月13日金曜日

『白くたなびく毒の糸・サムクラゲ|水中映像(伊豆)』



サムクラゲ
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▶ https://www.azarasi.jp/details/samukurage.html

青い海の中では白いものがとてもよく目立つ。
離れて見れば青っぽくはなるものの、周囲との明暗差があるので、「ん? なんだろう」と気づきやすい。
キヨヒメクラゲみたいに透明だと見えにくいけれど、白っぽいクラゲは意外と目立つ。

逆に赤は、海の中では黒ずんでしまう。
赤い縞々のアカクラゲは明るい場所で見れば一見派手だけれど、水中ではむしろ迷彩色だ。

このサムクラゲは、かなり白っぽい。
傘も触手も白っぽいが、中央のひらひらした部分、いわゆる口腕の部分が透明感のない白で、これがなかなか目立っていた。

最初に見たとき、このクラゲはダイビングエリアの境目を示す海底の浮きに、触手を引っ掛けた状態だった。
とにかく触手が長い。

自分のワゴン車より少し長いかと思ったので、5mほどだろうか。
もっとも、水中マスク越しに見ると物体は大きく見えるので、三割引きして4mほどといったところかもしれない。

タコ糸のように細い触手に毒の刺胞があり、獲物を麻痺させて絡めとる。
文章にすると、まるで他の惑星のモンスターだ。

触手は細いわりに意外と丈夫なようで、千切れる様子はない。
しかも「しばらくこのままでもいいか」という感じで、脱出しようという素振りもない。
なので、少しお手伝いすることにした。

少し刺激を与えれば触手は縮むはずなので、引っ掛かっている触手が縮めば外れるだろうと思い、浮きの付いたロープを軽く揺すってみる。
軽く、自分に触手が来ないように。
すると、予想通り触手は短くなりながら、するするとロープから外れていった。

解放されたサムクラゲは元気よく拍動し、どんどん水面へ上がっていく。
自分も浮上しながら、ときどき海底を見て、さっきの浮きを確認する。
クラゲは意外と速いので、夢中になって泳いでいるうちに、知らない場所へ流されてしまうこともあるからだ。
幸い、ほぼ真上に上がっていたようで、ダイビングエリアから外れてはいなかった。
もう水面。というところまで来たので、サムクラゲとは、ここでお別れにする。

文ではサムクラゲと書いているが、最初はユウレイクラゲかと思っていた。

図鑑を見てもイマイチ納得いないでいると、次のページにサムクラゲが載っていて納得の範囲に収まった。
ということでサムクラゲなのだけれど、実のとことは違いの説明が難しすぎてわからず、あまり自信はない。

ところで「サム」とは何だろう。
寒い海に棲むクラゲらしいので、「寒」なのかな。

2026年3月7日土曜日

『雨上がりの沼津で・キヨヒメクラゲ|水中映像(伊豆)』



キヨヒメクラゲ
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【キヨヒメクラゲの詳細情報・サンプル動画はこちら】

https://www.azarasi.jp/details/kiyohimekurage.html

 撮影したのは3月の沼津・大瀬崎。
春濁りもなく、海は透き通るように青かった。だからだろうか、次から次へと妙な生物が目に入ってきて、少々困るほどだった。

このとき、キヨヒメクラゲと、後からわかる物体には二度出会っている。
一度目はユウレイクラゲに出会っている最中で、背景には恐ろしく長い触手が映っている。

意外と早く流れていく中、「私と彼女とどっちを撮るの?!」みたいな状況になったが、即決でユウレイクラゲを選択した。

浮遊している生物は表層に多いようなので、海底の水深は深くなるものの、水深5mほどの層を探索する。
いろいろなサルパに出会い、1時間ほど経ったころ、もう帰ろうかなと思ったタイミングで二個体目に出会った。もちろん、そのときは最初の生物と同じ種類だとは思っていない。

綺麗な生物だったが、透明すぎてファインダーでは見えない。
とりあえずノーファインダーで撮っておいたものだ。

そういえばこのとき、長年使っていた水中ライトがひとつ水没した。
仕方なく照明は一灯だけになってしまったのだが、そういうときに限って、照明が必要な生き物がたくさん出てくる。

RCサクセションの歌が頭の中を駆け回りそうだけれど、この日は、明け方まで土砂降りで、そのあとの雨上がりだった。
驚くほど綺麗に富士山と南アルプスが見える、気持ちのいい一日だったので、ライトが水没したことも、あまり気にならなかった。