2026年1月10日土曜日

『空気のような魚・オオスジイシモチ|水中映像(伊豆)』



オオスジイシモチ水中映像
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「空気のような存在」という言い回しがある。
いてもいなくてもあまり変わらない、あるいは、まわりに溶け込んで特に目立たない、という意味で使われることが多いが、伊豆半島でのオオスジイシモチは、まさに空気のような存在かもしれない。
 
満天の星空のように群れることもなく、昼間は岩の隙間で、外の気配をうかがうようにしている。夜になると出てくるものの、遠くへは行かず、庭先のような近場で仲間が集まり、「今日はどうだった?」とでもいうような井戸端会議をしているようだ。
「空気のような存在」は、悪い意味で使われがちだが、24時間365日、捕食者の攻撃にさらされている生物にとっては、実に素晴らしいことだ。
 
オオスジイシモチの茶色の濃淡からなる縞模様には、自分の体の輪郭をぼかす効果があるとされ、捕食者に「魚ではない何か」と錯覚させるそうだ。そのうえ、縞模様が眼球にも通ることで目を隠し、急所である頭の位置を分かりにくくしている。
なんだかよく見えない物体のうえに、急所がどこなのかもよく分からない。最新鋭の“ステルス魚”といったところか。
 
さらにもう一つ、尾の付け根にある黒い点は、目を演出するためのもので、ステルス効果をかいくぐって攻撃してきた捕食者に、頭だと思わせて尾に噛みつかせるための「オトリの目」である。巧妙な仕掛けは何重にもある。
しかも繁殖は、テンジクダイ科お得意の「口内保育」。メスが産んだ卵をオスが口の中に入れ、孵化するまで、ほぼ絶食状態で守り続ける。オスに我慢は強いられるが、卵の段階で誰かに食べられてしまう心配はなく、省エネで高効率な繁殖戦略といえる。
 
オオスジイシモチの場合は、さまざまな戦略を重ねた末に、「空気のような存在」にまで “到達” した生物なんじゃないかな。最高の誉め言葉のつもりだけど、海の中に空気は無いな…

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