先週は水中カメラマンの仕事で信州へ、今週は海中の環境調査の仕事で北国だ。
北緯41度。延々と続く砂浜には鏡みたいに綺麗な波が打ち寄せてる。水温は15度前後で、思いのほか暖かいけど、最低気温は0度で少し雪がちらついた。
風は、ものすごく冷たい。
昔からよく「いろんな所へ行かれて良いですね」と言われてた。「そうですね」、と答えはしてたけど、最初からそういう、あっちで撮影、こっちで調査、またあっちで調査。という仕事しかしたことが無かったので、特にそれがいいと思ったことはなかった。正直なところ、強制的な地方巡業みたいで嫌だった。
数年前に伊豆で定着して、毎日毎日同じ風景と海の中を見るようになると、地方の海への撮影や調査は必然的に少なくなった。でもその分、違う海へ出かけるということがとても楽しみに変わってきた。
“毎日の伊豆の海に飽きて、違う海が新鮮だ”という訳ではなく、その逆なんだ。
まったく違うところに潜ってから戻ったときの伊豆の海。そのときに新しい見方ができるようになるような、そんなヒントがあるような気がするんだ。
前回のブログで書いたトラウツボとイセエビの救出劇の話はとても人気が高かったようだ。
ダイバーが珍しがって喜ぶような生物のお話より、みんなが良く知ってる当たり前な生物が、実際に海の中でどうやって生活してるのかの方が興味を持ってくれるということなのかな?。
僕はその方が嬉しいけどね。
そういう話は実は海の中にいっぱい転がってるんだけど、どうも目が慣れちゃうと素通りしてしまいがちになってしまう。
そうならないように。といつも心にとめてはいるのだけど、やっぱりなかなか難しい。慣れというのはとても恐いもんだ。
そういう意味では、ちょこちょこと呼んで頂ける違う海の仕事はとてもためになる。慣れで無意識のうちに固まってしまった感覚を、元の方へ修正してくれるような気がする。
目をつぶって、深呼吸をするような感じだろうか。
前回の今回で、同じようなんだけど、今回は写真じゃなくて動画で撮ったものだ。 基本的に僕は動画屋さんなのでね。こっちの方が面白いでしょ?という再出品だ。
本来は別の作業で潜っているので、こんなことしている暇はないだろう!と怒られそうなんだけど、この状態を見てほっとくわけにもいかないしね・・・
このカニは「ショウジンガニ」というカニで、伊豆の浅瀬の岩の隙間を覗き込めば、必ずいるといってもいいくらいに沢山いるカニだ。
伊豆の民宿で出たお味噌汁に、半分にぶった切られた真っ赤なカニがドーンと入っていれば、まずそれはショウジンガニ。出汁だと思って食べない人も多いけど、ぶりついて身を吸うとすばらしく美味しい。
テトラポットの下で放置された釣り糸に絡まって身動きがとれなくなっていたこのショウジンガニ。
いったいどういう風に絡まったのか、体中グリグリに何周も巻かれてしまっている。これじゃあ自分で脱出することはまず無理だ。
取ってやろうと思ったのだけど、ナイフを持ってなかった。
作業用のすばらしく切れるナイフをいつも持ってるのに、鞘が壊れたので外してたんだった。
無理やり引っ張ったら体が壊れてしまうし、このグリグリをほどいていくしかない。
最初は逃げようとしていたショウジンガニも、はずしにかかったらなんだか大人しくなって、ハサミで攻撃することもなく、まるで犬がひっくり返ってお腹を見せているような状態だった。
よく見ると、ショウジンガニは卵を抱えたメスだった。お腹いっぱいに見える黒いツブツブは全部子供達。これは救出しないとかわいそうだ。
なんとかほどいてあげて、そっと離したときが面白かった。
ゆっくり歩いてたかと思うと、急に走り出して、クルっと一回転して岩の中に消えていったんだ。
なんだか、すっごい喜んでいるように見えてビックリした。カニがそんなことするのかな?
カニが喜びを表現するなんて、聞いたことは無い。
足が一部具合悪くなってて、図らずも一回転してしまったとも思えなくも無いが。。。
喜んでいたと、思いたい。
浦島太郎みたいな昔話は、こんな出来事から始まるんだろうかと想像してしまった。