2011年11月16日水曜日
北緯41度
先週は水中カメラマンの仕事で信州へ、今週は海中の環境調査の仕事で北国だ。
北緯41度。延々と続く砂浜には鏡みたいに綺麗な波が打ち寄せてる。水温は15度前後で、思いのほか暖かいけど、最低気温は0度で少し雪がちらついた。
風は、ものすごく冷たい。
昔からよく「いろんな所へ行かれて良いですね」と言われてた。「そうですね」、と答えはしてたけど、最初からそういう、あっちで撮影、こっちで調査、またあっちで調査。という仕事しかしたことが無かったので、特にそれがいいと思ったことはなかった。正直なところ、強制的な地方巡業みたいで嫌だった。
数年前に伊豆で定着して、毎日毎日同じ風景と海の中を見るようになると、地方の海への撮影や調査は必然的に少なくなった。でもその分、違う海へ出かけるということがとても楽しみに変わってきた。
“毎日の伊豆の海に飽きて、違う海が新鮮だ”という訳ではなく、その逆なんだ。
まったく違うところに潜ってから戻ったときの伊豆の海。そのときに新しい見方ができるようになるような、そんなヒントがあるような気がするんだ。
前回のブログで書いたトラウツボとイセエビの救出劇の話はとても人気が高かったようだ。
ダイバーが珍しがって喜ぶような生物のお話より、みんなが良く知ってる当たり前な生物が、実際に海の中でどうやって生活してるのかの方が興味を持ってくれるということなのかな?。
僕はその方が嬉しいけどね。
そういう話は実は海の中にいっぱい転がってるんだけど、どうも目が慣れちゃうと素通りしてしまいがちになってしまう。
そうならないように。といつも心にとめてはいるのだけど、やっぱりなかなか難しい。慣れというのはとても恐いもんだ。
そういう意味では、ちょこちょこと呼んで頂ける違う海の仕事はとてもためになる。慣れで無意識のうちに固まってしまった感覚を、元の方へ修正してくれるような気がする。
目をつぶって、深呼吸をするような感じだろうか。
前回の今回で、同じようなんだけど、今回は写真じゃなくて動画で撮ったものだ。 基本的に僕は動画屋さんなのでね。こっちの方が面白いでしょ?という再出品だ。
本来は別の作業で潜っているので、こんなことしている暇はないだろう!と怒られそうなんだけど、この状態を見てほっとくわけにもいかないしね・・・
このカニは「ショウジンガニ」というカニで、伊豆の浅瀬の岩の隙間を覗き込めば、必ずいるといってもいいくらいに沢山いるカニだ。
伊豆の民宿で出たお味噌汁に、半分にぶった切られた真っ赤なカニがドーンと入っていれば、まずそれはショウジンガニ。出汁だと思って食べない人も多いけど、ぶりついて身を吸うとすばらしく美味しい。
テトラポットの下で放置された釣り糸に絡まって身動きがとれなくなっていたこのショウジンガニ。
いったいどういう風に絡まったのか、体中グリグリに何周も巻かれてしまっている。これじゃあ自分で脱出することはまず無理だ。
取ってやろうと思ったのだけど、ナイフを持ってなかった。
作業用のすばらしく切れるナイフをいつも持ってるのに、鞘が壊れたので外してたんだった。
無理やり引っ張ったら体が壊れてしまうし、このグリグリをほどいていくしかない。
最初は逃げようとしていたショウジンガニも、はずしにかかったらなんだか大人しくなって、ハサミで攻撃することもなく、まるで犬がひっくり返ってお腹を見せているような状態だった。
よく見ると、ショウジンガニは卵を抱えたメスだった。お腹いっぱいに見える黒いツブツブは全部子供達。これは救出しないとかわいそうだ。
なんとかほどいてあげて、そっと離したときが面白かった。
ゆっくり歩いてたかと思うと、急に走り出して、クルっと一回転して岩の中に消えていったんだ。
なんだか、すっごい喜んでいるように見えてビックリした。カニがそんなことするのかな?
カニが喜びを表現するなんて、聞いたことは無い。
足が一部具合悪くなってて、図らずも一回転してしまったとも思えなくも無いが。。。
喜んでいたと、思いたい。
浦島太郎みたいな昔話は、こんな出来事から始まるんだろうかと想像してしまった。
2011年11月7日月曜日
【11月7日:赤沢】 海中救助隊、出動。
7 Nov 2011
Akazawa IZUpeninsula
Fine
Temperture 20.2
Wind NE 2m
U/Wtemperture 21
Visibility 15~20
Akazawa IZUpeninsula
Fine
Temperture 20.2
Wind NE 2m
U/Wtemperture 21
Visibility 15~20
昨日はテレビ番組の水中カメラマンの仕事で信州の湖へ行ってきた。さすがに信州は肌寒く感じたのだけど、いやいやとにかく紅葉が見事だった。
伊豆の山の緑を見て、「緑っていろんな緑があるんだなぁ」と思ったけど紅葉の赤もすごいもんだ。
ちょっと写真に撮ったけど、うまく写ってないので、とりあえずマイケル・ケンナ風にして遊んでみた。
こういう表現って、ビデオではかなわないなぁ。。。
今日は赤沢。
色々と探索しようと思って泳いでいたのだけど、どうも釣り糸が気になる。
最近釣りがまたブームなんだろうか?やたらと引っかかって放置された釣り糸が目にとまる。
どうたったらこんなスパイダー状態になるのだろうか?。これ見て、今日は探索はやめてちょっと掃除をすることにした。
釣り糸は波に揺られ、ムチのようにまわりの海藻に絡まりながら引きちぎり、最後は団子状になる。
海藻が無ければそこに棲んだり、付着物や海藻自体を食べる生物は困ってしまうので、そこには棲めなくなってしまう。
海の中が釣り糸だらけだと、ダイバーが危ないだけじゃなくて、海の生物にも危機なんだ。
普通なら穴の奥へとバックして逃げて行くところだけど、こいつはジタバタするばかり。
釣り糸が絡まってるんだ。
なので、救出!
イセイエビは実はハサミがない。指を挟まれる心配なく、意外と安心して作業ができる。
イセエビ1名救助しましたっ!
さて、お次の糸を、と引っ張ると、何やら振動が・・・
もしかして魚付いてる??
それもちっちゃいの!。かわいいー!!なんか体つきがレプトケファルス幼生時代っぽい感じがするくらい小さいの。
いやいや、この場面では「かわいそー」だな。
貫通させてから抜こうにも、ニッパーなんて持って泳いでない。
今日は釣り糸を巻きに巻きまくったんだけど、回収する袋をもってなかったもんで、手で持ってたら自分も釣れちゃった。中身には刺さらなかったけどね。
糸を手繰って針をつまむとクルクルと丸まってこんなんなっちゃうし・・・
口もえらい小さいので、噛まれても大丈夫だろうと素手になって挑んだんだけど、いやいや、こいつは時間がかかった。
でも。
トラウツボ1名救出しましたっ!!
口をぶっ壊すこともなく針は外れ、岩の隙間へニョロニョロとお帰りになった。
と首かしげながら泳いでいると、ほら、今度は何だよ。
海面から繋がった釣り糸の先は岩の隙間の小さな棒に絡まってる。
釣り竿?、いやいや、動いてるし。
要救助者発見しましたーっ!!!
と声が聞こえてきそうなシーンを撮らせてもらい、スーッと触覚を撫でると糸はイトも簡単に取れたとさ。
イセエビもう1名救助しましたっ!!
釣り糸が偶然に触覚で巻き結びになったんだろうね。
緩めてみようとは思わずに、ひたすらに引っ張り続けていたので取れなかったらしい。さすがエビだ、バックあるのみ。
今日は釣り糸を巻きに巻きまくったんだけど、回収する袋をもってなかったもんで、手で持ってたら自分も釣れちゃった。中身には刺さらなかったけどね。
釣りするな、なんて言ったって絶対に無理だろうからなぁ。僕もするしね(笑)
いつも潜ってる海だからね、たまには掃除をしないとイカンということでしょう。面白い発見もあるかもしれないしね。
2011年11月5日土曜日
【11月5日:赤沢】 甘い名前
5 Nov 2011
Akazawa IZUpeninsula
Cloudy
Temperture 22.1
Wind S 2m
U/Wtemperture 21
Visibility 10~18
晴れ間が覗けば暑い位、北風が多少吹いていても、厚手の上着を着るような感じでは無い。
海の中も、少しだけ暖かくなって、まだまだシーズンだなと感じさせる勢いだ。
アカヒトデを見てみるとヒトデヤドリエビがいる事が多くなってる。
年中アカヒトデに棲んでいるというわけでもなく、秋からがよくみられるシーズンだ。
このエビ、あまりにも短足なためか、よっぽどの角度からみてみないと足が見えない。
いや、よっぽどの角度から見てもよく見えない。
裏側は一体どうなっているのか、今度うまい観察方法を考えてみようかな。
実はかなり小さいウミウシで5ミリくらいしかない。
別に捜そうとしてた訳ではないのだけど、目にとまってしまったのだからよく見てみることにする。
小さい割には柄が豊富な体で、触覚の先がオレンジで綺麗だ。
スイートジェリーミドリガイ、という奴だろうか?
ウミウシはカラーバーションが色々あるので、なかなか種類を調べるのは難しいね。
しかし、スイートジェリーだなんていう名前の生物がいるなんてウミウシは面白い世界だ。
「魚の名前を憶えるのが苦手なんですよねぇ…」という話をよく耳にする。別に名前なんて憶えなくたって構わないとは思うのだけど、こんなインパクトのある名前だったら、グッと興味を持ってもらえるだろうな。
こいつはどうかは別として、僕は「スイートジェリーウミウシ」はもう憶えたよ(笑)
2011年11月4日金曜日
【11月4日:赤沢】 オンリーワン
11月4日
赤沢
晴れ
気温21.3度
北北東の風3m
水温22度±
透視度15m±
陸も水の中もいい秋。海も穏やかだ。
蒼く透明な水は、ここ2、3日はちょっと高くて23度を指す時もある。
「温度計壊れたかな?」って思うけど、確かに肌さわりも温い感じ。1度の差は肌で確実にわかるほど大きい。
見事にカラフルな魚は、「ツノダシ」。
いかにも南国チックな色合いだけど、伊豆でも普段から見られる魚だ。
いつもは1匹か2匹で見る事が多いのだけど、今日は6匹も集まっていたので綺麗だったな。
南国の島では、このツノダシが数百と群れて見られることもあるそうで、そりゃぁ見応えあるだろうなぁ。
あまりにも普段から見かける魚なので、ガイドでもいちいち「ほら、あれがツノダシだよ」って言う事は少なくなってしまっているんだけどね。このツノダシ、実は結構凄者だ。
だってさ、インド洋から太平洋の、足のつくような浅瀬から100mを超える水深まで、物凄く広い範囲でいるんだよ。
伊豆でもオーストラリアでもハワイでもタヒチでもモルディブでも。手軽なスノーケリングでも死にそうになる位のDEEPでも、ツノダシに会える。
そして、ツノダシは「スズキ目 ツノダシ科 ツノダシ属 ツノダシ」。
スズキ目ってのは、大概の魚的恰好をしている魚はスズキ目なのでまぁいいとして、その先の分かれ目からは「ツノダシ」一種類だけ。ほんの少しも親戚のない。完全無欠のツノダシオンリーワン。
世界中出会うツノダシは、○○ツノダシ。などと枝分かれすることなく、ツノダシはツノダシ。
なんかそれだけでも一本筋の通った気迫を感じさせてくれるのに、さらには繁殖についてもよくわかっていないようで、どこでどうやって産卵して育つのかは謎みたいだ。
超メジャーなのに私生活は謎だらけなんて思うと、無視するわけにもいかないなぁ…
これはメジナ。
縦の写真、好きなんだよね。気持ちいい感じがする。
テレビも縦にならないかな・・・
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